Sunday, 8 April 2012

Money doesn't grow on trees. チャリティショップの懐事情


今日は、前回に続き私がボランティアをしているチャリティショップについてですが、
「果たしてチャリティショップは実際儲かっているのだろうか」ということについて考えてみたいと思います。
(なんか最近、「ことわざ」に関する既述がほとんど無くなってきたので、そろそろ方向修正しないと・・・と思いつつ、とりあえずは開発関係の記事を書いちゃいます


NGOの存在目的はより良い社会を実現することですから、
企業のようにお金儲けをすることが最終目的ではありませんが、
前回も書いたように、その活動を継続するためのファンドレイジングは非常に重要です。

英語でもMoney doesn't grow on trees」(お金は木にならない)という諺があります。
それはNGOにとっても同じです。いかに崇高な理念があっても、
活動資金が無ければその目標を実現することはできないですから、
いかに活動資金を調達するかは、文字通りNGOの生命線です。

NGOやNPOの資金集めは大きく3種類に分かれると考えています。
1.民間(個人や法人)からの寄付
2.政府や公的機関からの補助金
3.独自に営業活動を行い、その収益を活動資金に充てる


チャリティショップは、もちろん3番目「いらなくなったものを無料で寄付してもらい、
それを売った収益を慈善活動に充てる」という活動を行っているところです。
(蛇足ですが、NGOは銀行からの借り入れをすることはほとんど無いと思います。もしそのような例を知っている方がいれば、興味深いのでぜひ教えてください!)

私の働いているノーリッチショップの店舗別損益状況についての情報が、
手に入れば一番面白いのですが、残念ながら私はそこまで経営の中枢に関わっていないので、
Oxfam GB(英国オックスファム)が発行している年間レポートを見てみることにしましょう。http://www.oxfam.org.uk/resources/downloads/reports/report_accounts10_11.pdf

まず、2010年度のオックスファムの総収入は、367.5百万ポンド、
日本円に換算すると(1ポンド=130円)477.8億円。めちゃくちゃでかい!
その収入のバランスがどうなっているのか、下の円グラフ見てみますと
1)ピンク = 民間寄付(+相続財産?)→ £101.2m  (131億円)
2)イエロー = 公的機関からの寄付 → £136.1.2m (181億円)
3)レッド(+濃いグリーン)→ 営業活動からの収入= £85.9m(112億円)
(その他のブルーや水色は基本的に公的or民間の寄付になります)
出典:Oxfam Annual Report 2010/11
この円グラフを見ると、1,2,3が素晴らしいほどにバランスが取れていて
オックスファム、さすが、安定的な財務基盤があるなぁ、と見えます。
が、実際このグラフはあまり事実を表していません、というかむしろ誤解を招きます、
なぜなら、それぞれにかかるコストを差し引いていないからです。

というわけで、コストを差し引いて最終的にチャリティ活動に使われる金額にしてみると
ざっくり、こんなかんじになります。


筆者作成
(寄付の公的・民間のコスト内訳は資料がありませんでしたのでまとめました)


つまり何が言いたいかというと、実際のところ、
営業活動(チャリティショップ)の収益はオックスファムの活動資金の10%未満であり、
援助活動のための資金のほとんどは寄付で成り立っていると言うことです。


うーん、ちょっとがっかり?と思うかもしれませんが、そんなことはありません。


たしかにその収益の貢献度には限界があるかもしれませんが、すごいのはその収益率です。
売上£85.9mに対して、ネット収益が£20.9mですから、
収益率はなんと、24.3%ということになります。
(利息払いor運用収益、特別利益or損失、税金の支払いなどが無いとすれば、営業利益≒経常利益≒当期利益になりますが、ここではざっくり営業利益に近いという感覚で捉えます。店舗の減損とかあるのかもしれませんが・・・)


収益率24.3%がどれくらいすごいことかというと、
日本の小売業界の平均営業利益率は2.1%だそうですから(出典:経産省)、
同じ売上に対して12倍くらい利益が出ると言うことですね。


この高収益率の理由こそ、まさに「チャリティーパワー」です。なぜなら、
・寄付される中古品については、仕入れ価格が「ゼロ」である。(原価ゼロ!)
・ボランティアさんの人件費が「ゼロ」である。(人件費ゼロ!)
だからです。


しかし、原価もほぼゼロで人件費もほぼゼロなのに、
コストが£65mもかかっているというとことが、なんだ腑に落ちませんなぁ。
とりあえず・・・もうちょっと詳しく見てみることにします。


前回でお話ししたように、オックスファムのチャリティショップでは、
主に2種類の商品を扱っています。
1)寄付されたもの(洋服や本、家具)
2)フェアトレード商品(チョコやマンゴー)やオリジナルグッズ(クリスマスカード等)です。
1については仕入れは完全にゼロですが、2は当然仕入れにコストがかかります。
また、人件費も有給のスタッフさんがいますので、完全にゼロではありません。
それ以外に店舗にかかる費用としては、家賃とか、光熱費がありますね。


そこで、1と2の売上とコストをそれぞれ見てみると・・・






なんと、ちょっとこれはびっくりだったのですが、仕入商品部門は赤字だったんですね〜
ちなみに前年度は、とんとんくらいだったようです。
つまり、寄付品部門はちゃんと利益を確保しているが、
仕入商品部門がいまいち利益に貢献していないということですねー。
しかし残念ながらそれぞれの費用の細かい内訳については、これ以上データが公表されていません。


 *  *  *
ここからちょっと、2.仕入れ部門の損益分岐点分析です。
財務分析に興味の無い方は、結論だけ読んでください。


費用分析で重要なことは変動費(売上によって変化する費用)と固定費(売上に関係なく発生する費用)を見分けることですが、通常、変動費の多くは仕入れにかかる費用ですので、
仕入れ価格がゼロである1.寄付品部門の総費用£53.7mは、ほぼイコール固定費(人件費、店舗運営費)だと推測されます。そこで、店舗全体にかかる固定費が、おそらく1と2の間で売上の割合で按分されていると推測し逆算すると、2.仕入れ部門の総費用£11.3mの内訳は、固定費は£6.8m、変動費が£4.5m。その結果、仕入商品部門が黒字になるには£12.8mくらいの売上が必要という計算結果になりました。


結論を言うと、オックスファムのチャリティショップに行ったときに、
フェアトレード商品やギフトカードを買うとお店が損すると言うことではありません。
むしろ、いっぱい買って下さい!そうすれば、黒字になります^皿^
 *  *  *


ところで固定費の内訳について考えると、スタッフさんの人数や店舗数を勘案するに、
おそらく非常の半分くらいは人件費なのではないかと考えています。
あとは店舗の家賃ですかねぇ。うーん。
また、これは次回詳しく書く予定ですが、
店舗あたりの売上がいまいち低いのでは無いかと考えています。

・・・
そろそろ授業の課題のエッセイに戻りたいと思いますで今日はこの辺にします。

次回は、このチャリティショップがどうすればもっと利益が上がるかについて、
考えてみたいと思います。
今回も読んで下さり、ありがとうございました。

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