Friday, 23 March 2012

授人以魚不如授人以漁—魚の釣り方は世界共通か?開発学(其の弐)

期末の課題に追われていて更新が少し遅れましたが、引き続き開発学について。


「飢えた人に魚を与えるより、魚の釣り方を教えてあげなさい」


ビジネス書などでも良くでてくるこの言葉、いったいどこの言葉なんだろうかと
調べてみたが、これまたいろんな意見が。
最も有力と思われるのは、タイトルの通り、古代中国の思想家老子の言葉という説。


「授人以魚 不如授人以漁」
人に授けるに魚を以ってするは、人に授けるに漁を以ってするに如かず。


一方で、ユダヤの諺だとか、アフリカの諺だとかいう説もあるようだった。
要は、良い諺は世界によく広まると言うことなんだろう。


意味はその言葉通りなのだが、この言葉、開発の哲学でも良く引用されることがある。


飢えや貧困で苦しんでいる人々に、食料や物資をただ与えるだけでは
彼らの援助に対する依存度を高め、結果的に悪循環をもたらす。
むしろ、自立・発展の道筋を示すことが重要である。という解釈になるだろうか。


これは当然、一理ある。
「援助漬け」「援助立国」というのはよく聞く話で、
他国からの援助に頼って国民を喰わせている国家は、とてもサステナブルとは言えない。


ただ、ここで浮かぶ一つの疑問、そして開発分野の中で議論を呼んでいるのは、


「魚の釣り方は世界共通か?」


北海道の氷の張った湖でワカサギ釣りをしている人が、
南アメリカのアマゾンでどうやって魚を釣るか、現地の人に指導できるのか?


ちょっと極端な例過ぎるが、そんなの無理だと誰でも解るだろう。


にもかかわらず、過去の多くの途上国開発において、
「先進諸国が発展してきた方法を途上国に伝授すべきだ」といった
かなり上から目線のスタンスが、まかり通って来たのは事実だと思う。
また、コストの削減と効率化の観点から理論化されたいわゆる
「標準化モデル(Standardised model)」として、
画一的な開発政策が地域や国の違いを考慮せずに押しつけられてきたという。


一つ例を挙げると、私がボランティアをしているチャリティーショップ(後日詳述)で
一緒に作業をしているおばあさんが、過去にご主人と一緒にウガンダで教育開発に
従事していたときのこと。
World Bankがその地域にやってきて、学校を建てた。
WBはアフリカは日差しが強く、なるべく外気の暑さを遮断する校舎が良いという基準で
学校を建てたので、できあがった校舎はほとんど窓の無い建物になった。
しかし、その地域はそこまで暑さが深刻だったわけでも無く、
むしろ、校舎内に全く日光が入らず、電気が無いのでとても勉強が出来ない環境だったそうだ。
「あの人達は現地の人の話も全く聞かず、彼らの持っているイメージで好き勝手やって
さっさといなくなってしまう人たちなのよ、そういう人にならないようにね」と
彼女は語気を強めて話していた。


・・・というわけで、そんな批判と反省から生まれてきたのが
いわゆる「参加型手法」なんだろうと私は勝手に理解している。


先進国が何かを一方的に教えるのではなくて、この地域において何が問題で、
どうすれば解決できるかを、その地域の人と一緒に考えよう。
それで、村の集会所に人々を集めて、一緒に村の地図を書いてみたり、
優先順位の高い問題についてゲームをしながら話し合ってたりする中で、
人々の自発的な「気づき」というやつを醸成していくこの手法。
日本のNPOでファシリテーターをやっている人たちの間でも
はやっているメソッドかと思うが、なにより参加して楽しい!ところがミソだと思う。


* * * *


でもこの手法は、時間がかかる。なにより一般化が難しい。というか、
もともと一般化を目的としていない。
その村の問題はその村特有の問題であって、隣村の問題ではない。
でも、一つ一つの村に回ってごまんとある問題を一つ一つ話し合っているうちに
日が暮れてしまう。。。。
なので、普遍的理論や一般化を志向する人々(文系では主に経済学者)には
少々むずむずするアプローチなんだろう。


では、主に経済学者が「援助のあり方」について、最近どういったアプローチをかけているかというと、
「Evidence Based Policy—根拠に基づいた政策」
つまり、政策を決定する際やどういった政策が効果があるかを議論するにあたって、
できるだけ科学的というか計量的な根拠(つまり、数字で示せる証拠だ)を重要視すべきだ、
ということを唱えている。


そして、その風潮の中で脚光を浴びているのが私が勉強している「インパクト評価」である。
この、日本人の間では開発学に関わっている人でもまだあまりなじみのない、
得体の知れない分野についての話は、また次回以降。









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